矯正治療を行うかどうか迷われている方の悩みのひとつとして「費用」という方も多いのではないでしょうか。
矯正治療では、長い治療期間がかかり、通院回数も多いため、その度に調整料、交通費もかかるとなると「一体、全部でどれくらいの治療費になるのか不安」と思ってしまうのも無理はありません。
そこで今回は、最近人気の治療方法「インビザライン」の費用・値段について詳しくご紹介します。
全体矯正・部分矯正によっての違いや、費用の支払い方法、医院の選び方なども併せて解説しますので、医院選びの参考にもぜひお読みください。
インビザライン矯正の費用・値段を解説
インビザライン矯正の費用・値段は、どちらの医院でもさほど費用帯に大きな差がなく、相場費用があります。
相場費用はおよそ、80万円〜100万円程度で、約90万円前後になることが多いようです。
(複雑な症例の場合、100万円~140万円程度になることがあります)
これは、インビザラインがアメリカ発祥の治療方法で、アライン・テクノロジー社で作製され送られてくることから、アライン社の取り決めた支払額があるため、あまり費用を下げて治療することが難しいためです。
インビザラインの歴史
1997年 | アメリカ | アライン・テクノロジー社 設立 |
1999年 | アメリカ | インビザライン販売開始 |
2001年 | ヨーロッパ | インビザライン販売開始 |
2002年 | 日本 | アライン・テクノロジー・ジャパン 設立 |
2006年 | 日本 | インビザライン販売開始 |
インビザラインは1999年にアメリカで治療開始され、アメリカから遅れること7年後に、ようやく日本でも治療が開始されました。
また、インビザライン製作に欠かせない、光学スキャニング機器「iTero」も、世界では2011年頃から導入され始めましたが、日本は3年ほど遅れて導入開始されました。
インビザラインが高い理由
日本は矯正治療技術は高いとされていますが、インビザラインはもとより、さまざまな医療技術は「輸入」に頼らざるを得ないのが現状です。
そのような背景から、インビザライン治療については、患者様1人につき数十万円をインビザラインに支払うことが決まっています。
原価が高いため、大幅な値引きをすれば、歯科医院は対価がなくなってしまうため、費用相場はさほど変わらないのが現状なのです。
ですから、あまりにも費用がお安い場合や「モニター価格で実質ゼロ」といった広告などには注意が必要です。
医院ごとに費用に違いがあります
インビザラインは、大体の相場費用はありますが、アライン社へ支払う費用にどれくらい費用をプラスするかは、医院ごとに異なるため、費用差はあります。
矯正治療では、定期的な「経過の確認」や「調整」を行うだけでなく、「口腔ケア」や「クリーニング」を行ったりしますので、矯正治療費用意外に何が行われ、どれくらいの費用になるかは医院が取り決めた費用ごとに違ってきます。
ですので「安いから」といって決めてしまうのではなく、治療費として支払う中に何が含まれ、どのような保証内容になっているかなど、きちんと事前に確認しておきましょう。
また、医院によって調整料込みの設定である場合と、そうでなく、来院するごとに調整料金がかかる場合があります。
調整料がかかる場合は、通院期間が長くなると、総額が高くなることがあります。逆に調整料込みの場合は「ここの医院は費用が高いな」と感じても、長期通院になった場合、都度調整料がかかる医院よりも、むしろ安く済んだというパターンもあるので、治療開始前にご自身の症状の難易度や、カウンセリングを受けた医院での概算を確認しておきましょう。
全体矯正の場合の費用
全体矯正は奥歯も含め全体的に歯を動かす方法です。
噛み合わせまでしっかり考慮した治療計画の中で歯並びを整えます。
また、歯の移動を大きく行うことができる「抜歯矯正」も対応可能ですので、一般的にワイヤー矯正を勧められるような歯並びでもインビザラインで治療することが可能になるケースもあります。
<費用相場>
おおよそ80万円〜100万円程度の費用です。
症例の難易度(軽度〜重度)によって費用が変わり、複雑な症例の場合、100万円〜140万円程度になることもあります。
○部分矯正の場合の費用
部分矯正は「前歯のみ」を治療するものです。
つまり、歯を中心から数えて、左右3番目までの歯(中切歯、側切歯、犬歯)の歯並びを整える治療をいいます。
部分矯正では前歯のみを動かすため、期間が短く済み、治療費が安いというメリットがあります。
しかし奥歯を動かさないため、出っ歯や受け口など、顎の形状が関係する不正歯列を改善することができません。
また、噛み合わせは変わらないため、結局後戻りしてしまうということもあります。
そのため、軽度の乱れでないと適用は難しく、出っ歯や受け口は治すことができません。
<費用相場>
おおよそ30万円〜60万円程度の費用です。
部分矯正も交換枚数によって費用が変わったり、医院の治療内容などによって設定された費用が変わります。
インビザラインで矯正するメリットとデメリット
次に、インビザラインのメリットとデメリットをご紹介します。
装置を検討する際には「自身にどのような装置が最適であるか」はとても重要な要素です。
使用する人によってはメリットであることも、違う人にはデメリットになってしまうこともあるかと思いますので、ご自身のライフスタイルに合わせてご検討ください。
インビザラインのメリット
インビザラインのメリットは、マウスピース矯正としてワイヤー矯正にはない特徴もさることながら、インビザラインだからこそできることとしてのメリットもあります。
それらを、以下に9つご紹介します。
①矯正治療中だと気づかれにくい
インビザラインは薄く透明な素材でできています。
ワイヤー矯正と違い、装着していても目立ちにくいので、矯正治療中だと周りに気づかれずに治療することができます。
これがメリットの中でも最も希望人前に出ることの多い方(営業職や接客業など)や、装置が目立つことが気になる方にはお勧めの治療方法です。
②痛みが少ないと感じる方が多い
ワイヤー矯正の場合は、金具の締め付けや、歯を動かす力のかかり具合の関係で、歯が動く際に痛みを感じることが多いです。
また、装置の凹凸も多いので、粘膜を傷つけてしまうと、口内炎などの痛みを伴うこともあります。
インビザラインは歯にかかる力がワイヤーとは異なることや、金具は使用しないため、治療中に痛みを伴うことが少ない装置です。
③歯型採りが楽にできる
矯正治療をワイヤーで行う場合には、装置作製のために歯型模型を作成します。
そのためドロドロした粘土のような歯科材料で歯型を採りますが、インビザラインはiTERO(アイテロ)という光学スキャナーで口腔内をスキャンするだけで済みます。
また、一度型採りをしておけば、装置交換ごとに再度歯型を採るという手間はありません。
④食事がしやすい
インビザラインは1日最低でも20時間以上の装着が必須ですので、ほぼ24時間付けたままです。
ただ、取り外しができるので、食事の際には外して行います。
そのため、ワイヤーのように、くっつきやすい食材を控えたり、繊維質のものが引っかかりやすいなどの煩わしさはありません。
⑤お口の健康も維持しやすい
インビザラインは歯磨きの際も外して行えます。
そのため、ワイヤー矯正に比べて、磨き残しによる虫歯や歯周病のリスクは低くなります。
また、装置は直接歯に接着することもないので、取り外しの際にエナメル質を傷つけたりする心配もありません。
さらに、金属を使用していないため、金属アレルギーの心配もなく、装置で粘膜を傷つけるリスクもありませんので、口腔内を清潔に健康的に維持しやすい装置です。
⑥幅広い症例に対応できる
インビザラインは、世界シェア率No.1のマウスピース矯正で、これまで膨大な治療データがあります。
その実績をもとに日々進化を続けており、従来マウスピースではできないとされていたような症例にも対応できるようになっています。
一昔前までは前歯しか動かせないとされていたマウスピース矯正ですが、インビザラインは奥歯も含めて全体的に歯を動かすことができ、ワイヤー矯正を主に使用している矯正歯科医師も併用治療として活用するなど、適応症例の幅が広がっています。
⑦治療終了までイメージしやすい
インビザラインは専用のプログラムを用いて、コンピューター上で治療開始前から治療終了までをシミュレーションすることができます。
そのため患者側は自分の歯並びがどのように動いていくのかイメージしやすく、また、治療継続のモチベーションのアップ・維持にも繋がります。
⑧通院回数が少ない
ワイヤー矯正の場合、調整のために月に1度来院が必要になることがほとんどです。
しかしインビザラインは月1回から始まって、慣れて来ると2〜3ヶ月に1回程度になることも多く、忙しく通院が難しい方には取り組みやすい治療方法です。
⑨同時にホワイトニングができる
インビザラインはマウスピース型である特性を利用して、矯正治療期間であってもホワイトニングを受けることができます。
インビザラインのデメリット
次に、インビザラインのデメリットを5つご紹介します。
メリットである反面、デメリットに転じるケースもあるということを踏まえ、装置選択時の参考にされてください。
①装着時間を守らないと動かない
当たり前のことになりますが、マウスピースを装着しないと歯は動きません。
インビザラインはマウスピースタイプの装置なので、取り外せることがメリットになることも多いのですが、その分、患者自身で責任を持って決められた時間の装着を継続しないと、治療が計画通りに進みません。
簡単に取り外しができることがデメリットになってしまうこともあります。
②食後すぐに歯磨きが必要
インビザラインは歯列全体を覆う装置のため、食後そのまま再装着してしまうと、虫歯や歯周病のリスクを高めてしまいます。
そのため、食後は必ず歯磨きして再装着する必要があります。
③全ての症例に対応できるとは限らない
インビザラインは改良が進んだことで、さまざまな症例に対応できるようになってきています。
しかしまだまだ、ワイヤー矯正ほど多くの症例に適応できるわけではありません。
インビザラインのみで治療に限界がある症例の場合には、ワイヤー矯正など他の補助的な装置と併用して治療することが必要になることもあります。
④自己管理が必要
インビザラインはワイヤー矯正に比べると通院回数が少なく済みますが、次の来院まで口腔内チェックが無い分、自身でしっかり口腔内を健康に保つ努力が必要になります。
装置の交換や管理はもちろん、虫歯や歯周病にならないための口腔ケアも必要です。
また、お子様の場合、適切な時間装着してもらうために、治療を十分理解し、協力が得られることも必要になります。
⑤開始してすぐは会話しづらいことがある
インビザラインはかなり薄い素材ではありますが、口腔内はとてもデリケートで、少しの違和感も感じやすいものです。
装置は歯や歯茎全体を覆うため、治療開始して間もない頃は、発音しにくいと感じる方もいます。
通常は1週間前後で喋りにくさを感じなくなるようです。
インビザラインの種類と対応できる症状を紹介
実は、インビザラインには、いくつか種類があります。
ただし、すべての取り扱い医院や治療を行う矯正医がすべての種類のインビザラインを導入し、治療を行っているわけではありません。
矯正医によっては1種類しか取り扱っていないということもあったり、歯並びによって「この種類は適応外」となるケースがあったりもします。
この項では、インビザラインの種類と特徴、対応できる症状などをご紹介します。
インビザライン・コンプリヘンシブパッケージ
こちらのパッケージは、歯牙移動の制限がないため、奥歯から前歯まで、全体的に動かすことができます。
以前は「インビザライン・フル」と呼ばれていた装置です。
奥歯の移動もできることから、重度と言われる歯並び(出っ歯や反対咬合、加害咬合、開口など)も治療することができます。
最も多く使用されているプランで、使用するマウスピース(アライナー)の枚数に制限がありません。(50枚以内で完了するケースが多い)
インビザライン・モデレート
こちらのパッケージは、比較的新しいプランです。
大きく噛み合わせを変える必要のない、中等度の不正歯列症状に適しているとされています。
26回までの治療を3回繰り返すことのできるプランです。
枚数制限はありますが、症例によっては無制限まで必要ではないと診断され、取り扱いがあれば、コンプリヘンシブパッケージよりも費用を抑えることができます。
インビザライン・ライト
こちらのパッケージは、軽度の噛み合わせのズレや、少しガタガタしている歯並びに適しているとされていますが、奥歯も含め28本全ての歯を動かすことができるタイプです。
14枚のマウスピースを交換しながら治療します。おおよそ7ヶ月程度で治療が終了になるような症例だと診断された場合に選択可能です。
インビザライン・エキスプレス
こちらのパッケージは、ライトよりもさらに軽い、ちょっと気になる程度のズレに適しているとされています。
前歯の隙間が気になる場合や、前後への多少のズレ、矯正治療後の後戻りなどが目的として使用されることの多いプランです。
交換のマウスピースは7枚で、3〜4ヶ月程度で治療が終了するくらいの症例に選択可能となります。
小児矯正対象のインビザライン
インビザラインには、小児矯正用のラインナップもあります。
それがインビザライン・ファーストとインビザライン・ティーンです。
一般的な小児矯正は、乳歯と永久歯が混在する時期である6歳〜9歳頃から、Ⅰ期治療として顎を広げてスペースを作る装置(ワイヤータイプ)で治療を行い、顎の成長が完了する12歳以降あたりからⅡ期治療に入り、歯並びと噛み合わせを整えます。
インビザラインは、通常Ⅰ期治療を行う段階から適応することが可能で、顎の成長を促したり、筋機能のトレーニングをおこないながら、同時進行で歯を動かし、正しい位置へ歯を動かすことが可能な装置です。
インビザライン・ファースト
インビザラインファーストは、乳歯と永久歯が混合している時期から始められるインビザラインです。
ポイント1:乳歯列混合期から治療開始できる
歯並びを整えるだけでなく、顎の成長育成や筋機能トレーニング(MFT)も兼ねて治療できるため、1期治療からマウスピースで目立ちにくい治療を受けることができます。開始時期の目安は、第1大臼歯(6歳臼歯)が上下左右全て生えているころから開始できます。
ポイント2:Ⅰ期治療とⅡ期治療を同時進行できる
一般的にⅠ期治療は顎の成長を促すもので、歯自体は動かしません。しかしインビザラインは、将来生えてくる永久歯の並びを考慮するために顎を広げる補助を行いながら、すでに生えてきた前歯の永久歯の並びも誘導することが可能です。
インビザライン・ティーン
インビザライン・ティーンは、その名の通り、10代の方向けのシステムで、10代の顎の成長に配慮した独自の工夫がなされています。
ポイント1:プレシジョン・ウイング
奥歯部分に羽のように横方向に着いているもので、必要であれば付けることができます。この場所を噛み込むことにより、下顎を前の方へ誘導するというものです。下顎後退など、骨格的要素も絡む不正歯列治療も、インビザラインで可能になるというオプションが付けられます。
ポイント2:コンプライアンス・インジケーター
装着時間を確認することができる「インジケーターを付けることができます。インビザラインは20時間以上装着することが必須とされていますが、お子様の場合、どうしてもご自身で外してしまうというデメリットもあるため、このインジケーターで装着時間を確認し、治療のモチベーションを維持することに繋げることができます。
ポイント3:萌出スペースの確保
歯の交換期中に治療することもあり、完全に生えきっていない永久歯も、自然に正しい位置に生えることができるように「萌出スペース」を考慮してマウスピースを作製することができます。
インビザライン矯正の費用を少しでも抑える3つの方法
インビザラインは本社であるアメリカのアライン社へマウスピース作製の依頼等を行うシステムとなっている関係から、大幅に費用を抑えて治療するということが難しい部分もあって、ある程度の相場費用があります。
とはいえ、少しでも費用を抑えたいと思うのが患者側の心理でもあると思います。
また、総額は減らせなくても、毎月の支払い負担を軽減する方法はあります。
そこで、費用を少しでも抑えることにつながる方法を3つご紹介します。
分割払い制度を利用する
最近では、一括支払いでなくても良い医院も増えていますので、一度に100万円近くを用意できなければ治療が受けられないということも無くなってきています。
医院ごとに取り決めた「分割支払い制度」があるので、ご自身のライフスタイルに無理なくお支払いできる方法を導入している医院を選択するのも方法のひとつです。
分割支払いには以下のような方法があります。
院内分割
歯科医院で取り決めた支払い回数内で分割して支払う方法です。手数料がかからないメリットがありますが、大抵通院期間中には完了する回数までということが多いので、多くても12回〜24回までにしている医院が多いです。そのため、毎月の支払額は3〜5万円前後になります。
※ワイヤー矯正は適応できるがインビザラインはできないという医院も多いので確認が必要です。
デンタルローン
医療ローンを組んで、ローン会社に分割で支払う方法です。選択できる回数が多いので、毎月支払える金額から回数を設定することができ、毎月の負担を軽くすることができます。
※但し、分割手数料が発生します。また、分割回数が多いと治療後もしばらく支払いが続きます。
クレジットカード支払い
医院がクレジットカード支払いを導入している場合に行えます。
※但し、医院で手続き時には回数が選べないため、後ほど自身でカード会社にアクセスし、回数を分割にする手続きが必要になることと、カード会社ごとの分割手数料がかかります。
症状が軽い場合は部分矯正を検討する
インビザラインには、部分矯正適応のタイプがあります。
そのため、症状が軽く適応症例であると診断された場合には、全体矯正を行うよりも費用を抑えることができます。
※但し、医院によっては部分矯正タイプのアライナーを導入していない場合もあるので、事前に部分矯正の適応症例であるかも確認したい方は、取扱いのある医院かどうか確認してカウンセリングへ行かれることをお勧めいたします。
モニター割引を利用する
医院によってはモニターを募集している場合があります。
例えば、治療前と治療後の比較モデルとして口元の写真撮影をさせていただくことや、治療を受けた感想を伺うことなどが条件であるなど、実施している医院から提案される内容をクリアし、協力することが条件で割引するといったものです。
但し、全ての医院がモニターを募集しているわけではなく、また、募集していても、医院側が集めたいと思っている症例であることが条件であったりもしますので、必ずしも受けられるとは限りません。
条件に合えば、定額よりも割引された費用で治療を受けることができるので、医院ホームページ等で情報探しをするのも良いでしょう。
インビザラインだけで治療が難しい症状
インビザラインには、全体矯正から部分矯正までさまざまなラインナップがあることは前項でもお伝えしましたが、どのタイプを使うかは患者側が選ぶのではなく、適したタイプを歯科医師から提案されます。
中には、部分的に治療したいと希望されていても、全体矯正でないと難しい症状もあれば、インビザラインだけでは治療ができない重度な症状の場合もあります。
そこで、インビザラインで治療が難しいと言われる代表的な症状を3つご紹介します。
骨格が原因の重度な症状(出っ歯・受け口など)
インビザラインは歯を引っ張る力で誘導するのではなく、マウスピースの圧力を利用して歯を動かしたい方向へ移動させます。
そのため、歯を並べるための顎の骨「骨格」自体に原因があっての不正歯列を治療する場合には、インビザラインではできない症状と診断されることがあります。
もしくは他の治療を行いつつ、歯並びを整える段階になった時点でインビザラインに切り替えるなど、単独での治療が難しい場合があります。
考えられる治療としては、顎の骨の外科手術を行った後にワイヤー矯正と併用して行ったり、インプラント矯正が必要になったりというような治療方法です。
抜歯が必要な場合(重度のスペース不足)
インビザラインで矯正治療を行う場合には、基本的には奥歯の抜歯は行わないことが多いです。
足りないスペースはIPR法といって、歯全体を薄く削り、総合計で必要なスペースを生み出し、歯並びを整えていく方法を行います。
インビザラインはワイヤー矯正のように「引っ張る力」が使えないため、細かな歯の動きが難しく大きな歯の移動ができません。
抜歯をすると奥歯1本分のスペースを埋めるための移動が必要になるので、基本的には抜歯が必要なほどスペース不足の場合の矯正治療には、ワイヤー矯正をお勧めいたします。
埋伏歯がある場合
動かすべき永久歯が、歯茎の中に埋まっている状態や、歯の萌出が途中で止まってしまい、歯冠部分が完全に萌出していない状態を「埋伏歯」と言います。
歯が埋伏しているとマウスピースで押すことができないため、矯正治療が難しくなります。
まず初めに、歯を引っ張り出す「牽引」を行ってから治療を行うことになります。
インビザライン矯正で失敗しないための医院選びの3ポイント
インビザライン矯正で失敗しないためには「適切な治療を受けることができる歯科医院を選ぶ」ということが重要です。
保険適応外で高額な治療費用になることもあり、費用面や特典など魅力的な条件に目が行きがちですが、治療自体が失敗してしまっては本末転倒です。
失敗しない医院選びの参考にしていただくためのポイントを3つご紹介します。
日本矯正歯科学会の認定医がいる医院を選ぶ
インビザラインに限らずですが、歯科矯正治療を受けるための医院選びの目安として「日本矯正歯科学会の認定医が在籍する医院」をチェックしてみてください。
日本矯正歯科学会は、歯科矯正学の進歩、発展をはかることを目的とし、学術大会の開催、機関誌の発行、認定医等の設定、等の事業を行う公益社団法人で、歯科矯正治療において、いくつか存在する組織の中で最も歴史のある団体です。
認定資格は3つあり、どの称号も難しい条件をクリアしていないと与えられない称号です。
そのため、認定資格を保有している歯科医師であれば、的確な診断が行え、且つ高度な技術を持つ歯科医師であるという目安になります。
・日本矯正歯科学会 臨床指導医(旧専門医) 約350人
・日本矯正歯科学会 指導医 約600人
・日本矯正歯科学会 認定医 約3000人
・日本矯正歯科学会 会員 約8000人
インビザラインでの症例が多い医院を選ぶ
インビザラインはワイヤー矯正に比べ、歯科医師が直接的な「調整」を必要としないため、言ってしまえば「必要な機器を揃えれば導入できる」とも言えます。ですから、患者側とすれば、インビザライン治療で信頼のおける治療をしている歯科医師であるか、経験の少ない歯科医師であるかは、見極めが難しいという点もあります。
インビザライン社は、毎年症例数に応じて医院へ「ステータスランク」の称号を与えているため、その称号も医院選びの参考にされても良いと思います。
・レッドダイヤモンドプロバイダー(年間1000症例以上)
・ブルーダイヤモンドプロバイダー(年間750症例以上)
・ブラックダイヤモンドプロバイダー(年間400症例以上)
・ダイヤモンドプロバイダー(年間150症例以上)
・プラチナエリートプロバイダー(年間80症例以上)
・プラチナプロバイダー(年間50症例以上)
・ゴールドⅡプロバイダー(年間35症例以上)
・ゴールドⅠプロバイダー(年間20症例以上)
・シルバープロバイダー(年間10症例以上)
・ブロンズプロバイダー(年間1症例以上)
また、公式にインビザラインの認定医としての位置付けであるインビザドクターの称号もあります。
こちらは症例数だけでなく、ドクターの技術力なども考慮し与えられる称号ですので、より高度な技術を受けられる医院をお探しの場合には参考になると思います。
・インビザスーパードクター:治療経験数50症例以上、インビザラインにおいて確実な治療計画を立てられると認められたドクター
・インビザゴールドドクター:治療経験数が100症例以上、より的確な治療が行えると認められたドクター
・インビザプレミアムドクター:治療経験数500症例以上、さらにプロフェッショナルな治療が行えると認められたドクター
矯正の専門医がいる医院を選ぶ
一番分かりにくいのが、一般歯科で「矯正歯科」を標榜している場合です。
矯正歯科の専門医が在籍し、一般歯科診療と同様もしくは週に数回矯正日があるなど、矯正治療にも力を入れて診療されている医院もあれば、月に1回矯正日を設け、外部から矯正医を招いて治療を行っているというような形態の医院もあります。
矯正治療は月に1回の調整のペースなので、月に1回の矯正日があれば良いようにも思えますが、そうなると、毎月決まった日を矯正の予約で空けなければならなくなり、日程調整がむずかしい可能性もあります。
また、装置が壊れたり、当たって痛むなど、イレギュラーな事態が起きた時、すぐに対応してもらえない可能性もあります。
ですから、矯正治療を中心に医院を選ぶのであれば、矯正専門で治療を行う医院か、一般歯科併設でも矯正専門医在籍の医院を選ぶことをお勧めいたします。
まとめ
インビザラインの費用には相場があり、医院によって違いはあるものの、大きな費用差は無いように思います。
これはインビザライン社のシステムに沿って行われる治療であるが故です。
また、システムが確立している治療だからこそ、医院選びは慎重に行わないと、治療経験の少ない医院で治療を受けることになる可能性もあります。
インビザラインは症例数や経験値によって認定資格もありますので、医院選びの参考にされるのも方法のひとつです。
また、全体矯正や部分矯正など、プログラムの違いによって費用も変わります。
ですから、ご自身の歯並びを歯列矯正する際には、どのプログラムが適しているのか知るためにも、まずは取扱い医院でカウンセリングを受けることが、費用の概算を知るためのきっかけにもなりますので、ぜひお勧めいたします。