「歯列矯正で抜歯は絶対必要なのか知りたい!」
「抜歯はやっぱり痛そうだからなるべくやりたくない!」
といった方は多いと思います。
歯を抜くということに抵抗を感じたり、抜歯後の健康を不安に思うのは当然です。
本記事では、これまで2000件以上の歯科相談にのってきたデンタルジュが、歯列矯正の抜歯について詳しく解説しています。
本記事には、歯列矯正において抜歯が必要になるケースや抜歯の具体的な流れをなど、「抜歯が不安で歯列矯正をためらっている方にとって役立つ情報」を詰め込んでいます。
ぜひ参考にしてみてください!
歯列矯正で抜歯は絶対必要なの?
歯列矯正をする際、やむを得ず抜歯が必要になることがあります。
ここでは、歯列矯正において抜歯が必要になる主なケースを3つ紹介します。
必要なケース①顎が小さく歯列に空間が無い
顎が小さいと歯列矯正の際に抜歯が必要となることが多いです。
歯列矯正では歯を正しい位置へ移動させます。
その際に、顎が小さいと歯を移動させるためのスペースが少なく、全ての歯を正しい位置に収めることが難しいです。
抜歯せずに矯正しようとしても、歯が前後バラバラの状態になってしまい、歯並びの改善が上手くできません。
そこで抜歯をすることによって適切なスペースを確保し、そのスペースを埋めるように歯を正しい位置に移動させるのです。
必要なケース②上下の歯のかみ合わせが悪い
上下の歯のかみ合わせが悪い場合、歯列矯正の一環として抜歯が行われることがあります。
このケースも顎が小さいケースと同様に、歯を動かすスペースを作るために抜歯を行います。
例えば、上の歯列が下の歯列よりも出ている出っ歯の場合、一般的には前に出ている歯を後ろへ動かして矯正を行っていきます。
その際に、後ろに十分な空間がない場合には抜歯をすることで空間を作り出します。
必要なケース③親知らずが歯並びに悪影響を及ぼしている
親知らずが歯並びの乱れに影響を及ぼしている場合は親知らずの抜歯が必要になります。
親知らずが正常に生えていないと、他の歯に圧力がかかり歯並びが乱れてしまうことがあります。
その際、親知らずを抜くことで他の歯への影響を抑え、歯列矯正をスムーズに行えるようになるのです。
特に親知らずが横向きや斜めに生えている場合には歯並びへ影響が出やすいため抜歯が必要になることが多いです。
歯列矯正で抜歯をするメリット
歯列矯正において抜歯が必要になるケースを紹介しました。
抜歯が必要になっても、歯を抜くことに抵抗感がある方は多いと思います。
できれば避けたいと感じることでしょう。
ですが、歯列矯正の抜歯にはメリットもあります。
①治療計画がスムーズに進みやすい
抜歯をすることで、難しい治療であっても、スムーズに矯正することができるようになります。
抜歯を行って適切なスペースを確保すると、残りの歯を理想の位置へ移動させることが容易になります。
これにより、治療計画をよりスムーズに、かつ効率的に進行させることができるようになるのです。
そのため、歯列に重度の乱れがある場合は抜歯を行うことが多いです。
その他にも、理想的な噛み合わせを実現したいといった、歯列に関して特定の要望をお持ちの場合には、抜歯が効果的になります。
前もって抜歯を行って空間を確保しておくことで、治療途中に歯を移動させるスペースが足りないといったことが起きにくくなり、治療が予定通りに進みやすくなります。
②顔や輪郭への影響を抑えられる
歯列矯正において抜歯をしないと、歯の収まる空間が確保できず、前歯が突出してしまう可能性があります。
前歯が突き出ることで、口元が前方に盛り上がってしまい、Eラインの基準を満たす理想的な顔の輪郭が崩れてしまいます。
歯列矯正をする際に、整った横顔や顔の輪郭を求める方も多いでしょう。
理想の実現と歯列矯正を両立するには抜歯が効果的です。
歯列矯正で抜歯をするデメリット
歯列矯正における抜歯を検討する際には、抜歯による痛みだけではなく、他のデメリットやリスクも理解しておくことが重要です。
以下では抜歯を伴う矯正治療のデメリットを3つ紹介していきます。
①身体への負担が大きい
使えなくなった歯であればさほど問題はありませんが、健康的な歯を抜くことは身体にとって負担の大きいことです。
麻酔が切れた後は痛みや腫れ、出血が起こります。
また抜歯をした後は、強くうがいをしない、激しい運動はしない、長風呂をしない、飲酒をしない…など日常生活においてさまざまな制約が出てきます。
②治療期間が長引く
抜歯をすることは治療計画をスムーズに進めることには役立ちます。
予想外にスペースが確保できず、追加で抜歯をして…といった計画変更をなくせるのです。
しかし、スペースを確保してその部分を埋めるように歯を移動させるにはその分時間がかかります。
そのため治療が長期間にわたることを覚悟しなくてはなりません。
③費用がかかる
歯列矯正で抜歯をする場合は、当然抜歯のための費用が必要になります。
矯正治療における抜歯は保険適用されないため、1本あたり5,000円〜15,000円ほどかかります。
また、抜く歯の本数が多くなればなるほど費用が高くなってしまいます。
歯科医院によっては、歯列矯正の治療費に抜歯の料金が含まれていることもありますが、別途かかる場合もあるため、事前の確認が大切です。
抜歯を伴う矯正治療の流れ
歯列矯正において抜歯をするメリットとデメリットを紹介しました。
そこで次に、抜歯をすることになった場合に、どのような流れで矯正治療が進められるのかについて解説します。
歯列矯正には、ワイヤー矯正やマウスピース矯正など様々な治療法がありますが、どの治療法でもおおむね流れは同じになります。
①カウンセリング
歯列矯正を検討する際、まず初めに医院でカウンセリングを受ける必要があります。
カウンセリングでは、歯並びの悩みや理想を歯科医師に相談して、患者さんの状態に適した治療法を提案してもらいます。
その際に、歯科医師やスタッフとの相性やクリニックの雰囲気を確認することも重要です。
②治療法の決定
カウンセリングを受けた後、提案された中から治療法を決定します。
治療法によって、治療期間や費用、セルフケアの方法などは異なります。それぞれのメリットとデメリットを理解して自分にあった治療法を選択しましょう。
治療法を決定した後、口の中のレントゲン撮影および、虫歯治療やクリーニングが必要な歯の確認をします。
マウスピース矯正を選択した場合、この段階で歯型を取ってマウスピースを作ります。
その後、検査結果をもとにどの歯を抜くかなど詳細な治療計画が作成されます。
③抜歯を行う
抜歯が必要な場合、矯正をする前または矯正をしている途中に抜歯が行われます。
抜歯を行うタイミングは患者さんの症状によって異なります。
例えば、矯正に必要な空間が全くない場合は、矯正をする前に抜歯が行われることが多いです。
一方で、出っ歯の場合は、矯正を先に行い、ある程度歯並びを整えた上で抜歯を行う場合もあります。
抜歯をする部位ーどこを何本抜くの?ー
歯列矯正の際、かみ合わせに影響が少ない歯を選んで抜歯します。
通常、前から数えて4番目の第一小臼歯か、5番目の第二小臼歯が選ばれます。
これらの歯は、食べ物を切る役割の前歯や、かみ合わせの負荷を分散させる犬歯と比べると、かみ合わせへの影響が少ないため最適な抜歯候補になります。
また、小臼歯は奥歯と前歯の間に位置しているので、矯正による歯の移動が少なくて済むという利点もあります。
ただ、親知らずが斜めに生えていて矯正治療に支障をきたしたり、治療後の整った歯列に悪影響を与えたりする可能性がある場合は、親知らずを抜くのが一般的です。
抜歯による痛みはどのくらい?
多くの方が抜歯時の痛みについて心配に感じていることでしょう。
ですが、麻酔技術の進歩のおかげで、抜歯の治療はほとんど痛みを感じることなく行われます。
抜歯をした後も、麻酔が効いている間は、痛みをほとんどまたは全く感じないことが一般的です。
また、麻酔が切れた後に一時的な痛みや腫れが生じることがありますが、この痛みは、処方される痛み止めを飲むことで、数日以内には大幅に軽減します。
④矯正器具で矯正を行う
抜歯をした後、矯正器具を用いて矯正を行います。
矯正器具を1日に装着しなければならない時間や定期的な通院の頻度は、ワイヤー矯正やマウスピース矯正など矯正治療の種類によって異なります。
マウスピース矯正やワイヤー矯正に関しては以下の記事をご覧ください。
抜歯の跡はどのくらいで埋まるの?
抜歯の跡が完全に埋まるには、矯正の方法にもよりますが、1年から1年半ほどかかります。
ただ、歯列矯正によって歯が移動する速度は個人差があり、歯並びの初期状態によって変わり得るため、具体的な期間は様々です。
また、抜歯直後に歯茎にできる穴は、大体2〜3週間でふさがることが多いですが、その部分の骨が完全に回復し固まるには通常約1年かかります。
⑤アフターケア
矯正が終了した後は、保定装置(リテーナー)を装着して、矯正した歯列が後戻りするのを抑えます。
保定装置の装着は最低でも矯正期間と同じくらいの期間行う必要があり、装着中も通院が必要になります。
抜歯をしない方法もあるの?
抜歯が必要だと診断されても不安や抵抗感がどうしてもぬぐえないこともあるでしょう。
そういったときは、抜歯をしない方法を検討してみるのも1つの手です。
幸い、現代の矯正技術には抜歯を回避しつつ、歯並びを改善するための様々な選択肢が存在します。
以下では抜歯をしない方法をいくつか紹介していきます。
歯列拡大
歯列拡大は、特に子供の患者に対して効果的な方法と言われていますが、成人でも歯列の拡大は可能な場合があります。
この方法では、歯列を拡大することで歯のスペースを確保していきます。
抜歯の必要がなくなるというメリットがありますが、適用できる症例が限られるというデメリットがあります。
IPR(研磨)
IPRは、隣接する歯の一部を少しだけ削り、スペースを確保する方法です。
この場合、歯のエナメル層を削ることになりますが微小であれば健康上のリスクはほとんどありません。
ただし、IPRにより、作り出すことが可能なのはわずかなスペースです。
軽度の症例ではそのスペースを利用して歯を適切な位置に調整することができます。
インプラント
抜歯後のスペースの問題に対処するために、インプラントを用いることも一つの選択肢です。
これは、歯が抜けた顎骨に人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療方法です。
この方法は抜歯を避けるというよりは、抜歯の結果、どうしてもマイナスの影響があった場合に対処する方法になります。
抜歯をしないリスク
抜歯をしない矯正方法はどんな症例にも適用できるわけではありません。
無理に行うと、かえって噛み合わせに問題が生じたり、見た目に問題が出たりすることがあります。
以下では、抜歯をしないで矯正を行うことで起こる可能性のあるリスクについて解説します。
口元が出っ張ってしまう
抜歯が必要な場合に無理に抜歯をしないで矯正を行うと、入りきらなかった前歯が前に出て、口元が出っ張ってしまうことがあります。
その結果、歯並びや嚙み合わせに悪影響を及ぼしたり、横顔の美しさを損ねてしまったりすることがあります。
歯肉が下がってしまう
歯肉が下がる症状は「歯肉退縮」といい、歯肉に負荷がかかることで起きます。
抜歯をしない矯正を行うことで、狭いスペースに歯を無理やり並べることになり、歯肉退縮のリスクが高まる可能性があります。
歯肉が下がると歯が長く見えたり、歯の間の隙間が大きく見えるたりするなど、歯並びの美しさに問題が生じる可能性があります。
それだけでなく、知覚過敏や歯周病、虫歯が起こりやすくなることもあるので注意が必要です。歯肉退縮が進行すると歯が抜けやすくなる可能性も高まります。
後戻りしやすい
無理に狭いスペースに歯を並べることで矯正の完了後に歯並びが元に戻ってしまう場合があります。
元に戻ってしまった場合は再び矯正が必要になるため、余分な時間がかかってしまいます。
再矯正の費用も必要になる可能性があります。
まずは医師に相談!
歯列矯正の抜歯は痛みを感じる可能性がありますが、麻酔技術の進歩により、抜歯時の痛みは大幅に軽減されています。
それでも健康な歯を抜くことに抵抗がある方もいらっしゃるでしょう。
そういった方は抜歯をしない治療法を検討することもできます。
ただ、抜歯をする方法もしない方法もそれぞれにデメリットがあることを理解しておくことが重要です。
そのため、まずは医師に症状を見てもらい、自身の要望を伝えた上で抜歯をするか決めましょう。
もし、本記事を読んで抜歯について医師に相談したいと思ったら、ぜひ、デンタルジュをご活用ください。