本記事では難解な医療費控除の仕組みを説明し、実際に子どもの矯正ではいくらお金が戻ってくるのかを説明します。 |
医療費控除という制度を耳にしたことはあるがよくわからないという方は多いと思います。
特に、歯列矯正においては治療費は高額になるため、この制度を利用したいという方は多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、医療費控除の基本的な仕組みと、子どもの歯列矯正におけるその適用について詳しく解説していきます。
また、控除を受けるための条件や計算方法、申請方法についても触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
子どもの矯正の場合の医療費控除について
子どもの歯列矯正を検討している皆様にとって、治療費用は重要な判断材料になるかと思います。
日本では、高額な医療費に対する負担を軽減するために「医療費控除」という制度があります。
医療費控除とは、医療費を考慮せずに支払った税金の一部が戻ってくる制度で、医療費が高額になった場合、医療費を所得から差し引くことで所得が下がり、結果として所得税が差し引かれることになります。
特に歯列矯正は長期にわたる治療であり、その費用も決して安くはありません。
ですが、医療費控除の利用によって、一定の条件下でその一部を税金の還付として戻してもらうことが可能です。
歯科矯正は、医療費控除の対象となります。
ただし、先述のとおり、この制度を利用するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
子どもの歯列矯正に関する医療費控除を申請する際、まずはその年の総医療費がどのくらいであったかを把握することが重要です。
そして、それが年間で一定額を超えているかどうかを確認する必要があります。
この制度を適切に活用することで、歯列矯正にかかる負担を少しでも軽減させることができるでしょう。
医療費控除・所得控除とは
医療費控除を理解するにあたってまずは所得控除という制度を説明します。
医療費控除は、一定期間内に支払った医療費が基準額を超えた場合、その超過分に対して所得税が控除される制度です。この制度を利用することで、実質的に医療費の一部を税金の形で還付されることになります。
特に、子どもの歯列矯正にかかる費用は高額になりがちですが、医療費控除を適切に活用することで、その負担を少しでも軽減することが可能です。
所得控除とは、年間の総所得から特定の費用を差し引くことで、課税所得を減らすことができる制度のことです。
医療費控除は、この所得控除の一種であり、医療費が一定額を超えた場合にその超過分を所得から差し引くことができます。
この結果、支払うべき所得税が減少し、場合によっては過払い税金として還付されることもあります。
医療費控除を受けるには、年間で支出した医療費が一定額を超える必要があります。
この基準額は所得によって異なり、所得が高いほど基準額も高くなります(所得額が200万円以上は10万円が基準額となる、それ以下の場合のみ基準額は所得に応じて高くなる)。
また、医療費控除を受けるためには、レシートや領収書などの支出を証明する書類の保存が必要です。
これらの書類は、後で確定申告を行う際に必要となるため、大切に保管しておくことが重要です。
医療費控除を受ける条件は?
医療費控除を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。主な条件は以下の通りです。
- 年間医療費の合計額: 医療費控除を申請するには、まず一年間で支払った医療費の合計が一定額を超えている必要があります。この基準額は、10万円または所得の5%のいずれか低い金額が目安となります。これは、支払った医療費全体の中で、この額を超えた分についてのみ控除を受けることができるということです。
- 医療費の対象: 医療費控除の対象となるのは、医療機関で受けた治療費や薬代などです。歯列矯正も、美容目的ではなく健康のための治療=「医療目的」とみなされる場合、この対象に含まれます。特に子どもの歯列矯正は機能改善を目指すケースがほとんどなので医療費控除の対象になりやすいです。
- 支払証明書類の保管: 支払った医療費について、領収書やレシートなどの証明書類をしっかり保管しておく必要があります。これらの書類は、確定申告の際に必要となるため、大切に保管しておくことが重要です。
- 確定申告の実施: 医療費控除を受けるには、確定申告を行う必要があります。これには、必要な書類を揃えて税務署に提出することが含まれます。
これらの条件を満たすことで、医療費控除を受けることが可能になり、家計への負担を軽減することができるでしょう。
医療費が10万円を超えない場合
年間に支払った医療費が10万円以上の場合は特に条件なく医療費控除を受けられますが、一方で、10万円を超えない場合も、場合によっては医療費控除を受けられます。
所得が200万円未満の場合には、所得金額の5%を超えた分が医療費控除になります。
つまり、所得が150万円の場合は150×0.05=7.5(万円)を超えた分が医療費控除の対象になります。
生計を共にする家族とは?
「生計を共にする家族」という概念は医療費控除において重要です。
医療費控除においては先述の医療費を生計を一にする家族の医療費の合計金額と定めているため、その範囲をしっかり把握しておくことは重要です。
基本的に、同居をして生計を同じくしていれば対象になりますが、それ以外にも生活費・学資金の仕送りを受けている一人暮らしの学生や扶養控除から外れている配偶者なども範囲に含まれます。
医療費控除の計算方法
医療費控除を受けるためには、まず年間の総医療費を計算し、その後、控除額を算出する必要があります。
ここでは、その計算方法について詳しく解説します。
年間総医療費の計算: 年間に支払った医療費の合計を計算します。これには、診療費、薬代、歯列矯正費用など、医療機関で支払った全ての費用が含まれます。保険でカバーされた部分は除き、実際に自己負担した金額のみを計算に含めます。ちなみに、出産手当金、育児手当金、傷病手当金や傷病保険金、所得補填保険に基づく保険金・生命保険金などは差し引かなくても良いです。保険でカバーされていても差し引くものとその必要がないものがあるので注意してください。
(式:年間の総医療費(自己負担)=1年の医療費-保険金など)
控除額の算出: 年間総医療費から基準額(10万円または総所得の5%)を差し引いた金額が、控除対象額となります。例えば、年間の総医療費が50万円で、基準額が10万円の場合、40万円が控除対象となります。
(式:医療費控除の額=年間の総医療費(自己負担)-10万円または総所得の5%)
所得税率の適用: 控除対象額に対して、その人の所得税率を適用して、控除される税額を計算します。所得税率は所得によって異なるため、個々の状況によって控除額も変わります。
還付金の計算: 最終的に、控除される税額がその年に支払った所得税額を超える場合、その差額が還付されます。この還付金は、確定申告を行った後、数ヶ月以内に指定の口座に振り込まれます。
(式:還付金(目安)=医療費控除の額×所得税の税率)
還付金はどれくらい?
医療費控除を利用すると、最終的にどれくらいの金額が還付されるのでしょうか。
ここでは、具体的な還付金の計算例を挙げて解説します。
具体的な計算例
例えば、ある家庭が年間で医療費として40万円を支出し、その家庭の基準額が10万円だったとします(総所得が200万円以上)。
このとき、特に保険金等は無いものとします。
この場合、控除対象額は30万円(40万円 – 10万円)となります。もし、その家庭の所得税率が10%だった場合、控除される税額は3万円となります。
還付金額の算出: もし、その年に支払った所得税が3万円以上であれば、最大3万円が還付されます。しかし、所得税を2万円しか支払っていない場合は、還付されるのは2万円までとなり、残りの1万円は翌年以降の税額に繰り越されます。
還付金の額は、個々の年間医療費の合計額、基準額、所得税率によって異なります。
そのため、具体的な還付金額を知るには、これらの情報に基づいて計算する必要があります。
子どもの歯列矯正費用を含む医療費控除の活用は、家計にとって大きな助けとなる可能性があります。
特に、歯列矯正は多くの場合、10万円を超えるのでしっかりと医療費を把握しておきましょう。
この計算方法を理解し、適切に確定申告を行うことで、歯列矯正にかかる負担を減らすことが可能です。
所得税率とは
所得税率は、個人の年間所得に応じて定められる税率です。
先述のとおり、この税率は、医療費控除の計算において重要な役割を果たします。
ここでは、所得税率について詳しく解説し、それが医療費控除にどのように影響するかを説明します。
所得税率は、年間の総所得額に応じて異なります。
総所得が高いほど税率も高くなる傾向があります。
いわゆる累進課税の仕組みをとっており、これには支払い能力のある豊かな人がそうでない人より税負担を増やす「垂直的公平」という概念がベースにあります。
日本では、所得税率は5%から45%の範囲で設定されており、所得に応じて段階的に上がっていきます。
先述しましたが、医療費控除を受ける際、控除対象額に対して適用されるのがこの所得税率です。
控除対象額に所得税率を掛け合わせることで、実際に控除される税金の額が決定されます。
同じ医療費を支払っていても、所得税率が異なれば、医療費控除による実際の還付金も変わってきます。
所得が高い人ほど高い税率が適用されるため、控除される税額も大きくなります。
以下に所得税の税率を示します。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
出典:国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm)
医療費控除以外に歯科矯正の負担を減らす方法
医療費控除は、子どもの歯列矯正にかかる費用を軽減する有効な方法の一つですが、他にも負担を減らす方法がいくつかあります。
主にデンタルローンの利用、クレジットカードの利用、保険適用の治療などが挙げられます。
また、一部の市町村では、子どもの歯科矯正治療に対する助成金制度を設けていることがあります。
地域によっては、治療費の一部を助成してもらえる可能性があるため、住んでいる地域の制度を確認することもお勧めします。
これらの方法を活用することで、医療費控除以外にも歯列矯正の経済的な負担を減らすことができます。
それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため、家庭の状況に合わせて適切な選択を行うことが重要です。
デンタルローンとは
デンタルローンは、歯科治療専用のローンです。一括での支払いが難しい場合、分割払いで治療費を支払うことができます。
一般的に金利はクレジットカードの分割払いや一般のカードローンよりも低いのが利点です。
クレジットカード払いを利用する
歯科クリニックのなかには、クレジットカードでの分割払いが可能な医院もあります。
ポイント還元や分割払いによる金利の負担軽減など、カード会社のサービスを利用して賢く支払うことも一つの方法です。
保険適用となる場合もある
一部の歯科矯正の治療は、保険の適用が受けられる場合もあります。
先天的な異常や事故による歯並びの問題など、特定の条件下では保険適用が認められることがあります。
この点については、治療を受ける歯科医院に相談して確認することが重要です。
デンタルローン・カードローンも対象になるのか
歯科矯正にかかる費用の支払い方法としてデンタルローンやカードローンの利用を検討する方も多いですが、これらのローンを利用した場合、医療費控除の対象となるのでしょうか。
ここでは、その点について解説します。
基本的に、医療費控除の対象となるのは、直接医療機関に支払った費用です。
つまり、デンタルローンやカードローンを利用して支払った場合でも、実際に医療機関に支払った金額が医療費控除の対象となります。
ただし、ローンの金利や手数料は控除対象外となるため注意が必要です。
デンタルローンやカードローンを利用する際は、金利や返済条件などをよく理解しておくことが大切です。
また、支払いの際には医療費控除を考慮して、年間の医療費が基準額を超えるよう計画的に支払うことが推奨されます。
デンタルローンやカードローンを利用すること自体が医療費控除の対象から外れるわけではありませんが、その利用に関する条件や規定を正しく理解し、適切に管理することが重要です。
子どもの矯正はどれくらい費用が掛かるの?
ここでは、子どもの歯科矯正には一般的にどれくらいの費用がかかるのかについて説明します。
子どもの歯列矯正治療の費用は、治療方法や治療期間、矯正を行う歯科医院によって大きく異なります。
一般的に、費用の範囲は10万円から100万円程度と幅広いです。
これには初診料、治療計画の作成、矯正装置の費用、定期的な調整費用などが含まれます。
上記の範囲を正しく説明すると1期治療は約10万円〜50万円、2期治療は約20万円〜100万円となります。
簡単に説明すると、1期治療は乳歯と永久歯が混在した時期におこない、2期治療は永久歯が生えそろった後におこないます。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
いずれにしてもほとんどの場合で、医療費控除の対象となる医療費がかかることが多いです。
その際には、矯正治療があくまで「医療目的」の場合に限ります。
また、子どもの歯列矯正は、長期にわたる投資となるため、費用だけでなく、治療内容や期間、予想される結果なども考慮に入れて、慎重に選択することが大切です。
医療費控除の申請方法
医療費控除を受けるためには、確定申告を行う必要があります。
ここでは、医療費控除の申請方法について具体的に説明します
医療費控除の申請は、一見複雑に思えるかもしれませんが、適切な準備と手順に従えばスムーズに行うことができます。
必要な書類は?
医療費控除を申請するためには、その年に支払った医療費の領収書やレシートなどの証明書類が必要です。
これらの書類は、医療費の総額を証明するために用います。具体的には次のようなものが必要となります。
確定申告書(給与所得者は源泉徴収票)
医療費控除の明細書・レシート
診断書
印鑑
銀行の通帳(還付金の振込先口座)
マイナンバーカード(e-Taxで申告する場合)
これに加えてデンタルローンやクレジットカードによる分割支払を使用した場合は、契約書の写しもしくは信販会社の領収書が必要になります。
提出方法
確定申告書は、管轄の税務署に直接提出するか、郵送、または電子申告(e-Tax)を利用して提出します。
電子申告を利用する場合は、事前に必要な準備が必要です。
電子申告も利用できる
近年では、電子申告(e-Tax)を利用することで、自宅から簡単に確定申告を行うことができます。
電子申告を行う際の前の準備としては次のようなものがあります。
1.利用者識別番号の取得 2.電子証明書の取得 3.手続きを行うソフト・コーナーの選択
そして、申告・申請データの作成と送信を行います。
注意点について
医療費控除の申請にあたっては、いくつかの重要な注意点があります。
ここでは、それらについて詳しく説明します。
領収書の保管:医療費控除を申請する際には、治療に関する領収書をしっかりと保管しておくことが必要です。領収書は、支払った医療費の証明として必要不可欠な書類です。これらの書類を紛失すると、控除を受けることができなくなる可能性があります。
確定申告の期限:確定申告には期限があります。通常、確定申告の期限は翌年の2月16日から3月15日までです。ただし、この期間に忘れてしまっても自分で気づいたらなるべく早く申請するようにしましょう。
正確に記入する:確定申告書の記入に誤りがあると、申請が受理されないことがあります。特に、医療費の合計額や控除額の計算には注意が必要です。不明点がある場合は、税務署や専門家に相談することをお勧めします。
家族の医療費も考慮する: 医療費控除は、本人だけでなく、生計を共にする家族の医療費も合わせて申請することができます。忘れずに家族全員の医療費を合算しましょう。
これらの注意点を守ることで、医療費控除の申請をスムーズに行うことができます。
まとめ
この記事では、子どもの歯列矯正に関連する医療費控除の概要、計算方法、申請手順、さらにはその他の費用軽減方法について詳しく説明しました。
重要なポイントを再確認します。
子どもの歯列矯正にかかる費用はほとんどの場合、医療費控除の対象となり得ます。
年間で10万円または所得の5%のどちらか低い金額を超える医療費に対して、所得税から控除が受けられます。
控除額は、年間の総医療費(自己負担)から10万円または所得の5%を差し引いた金額に所得税率を適用して計算します。控除額は所得によって異なります。
医療費控除を受けるためには、確定申告が必要です。
申請には医療費の領収書やレシートの保管が重要です。
デンタルローンの利用、クレジットカードでの分割払い、保険適用、地域の助成金制度など、医療費控除以外にも負担軽減の方法があります。
子どもの歯列矯正は、多くの家庭にとって大きな経済的負担となりますが、医療費控除やその他の方法を活用することで、負担を軽減することが可能です。
矯正治療でお悩みの方はぜひデンタルジュをご利用ください!