マウスピース矯正のデメリット
「目立たない矯正装置」として注目されている「マウスピース矯正」ではありますが、メリットだけではなく、デメリットもあります。
治療を考えるときは、どうしてもメリットだけを考えがちですが、デメリットも把握した上で治療を受けることが大切です。
そこで今回は、マウスピース矯正のデメリットについて詳しくご紹介していきます。
1日20時間以上装着する必要がある
マウスピース矯正は、歯が少しづつ動くように設計されたマウスピースを数週間ごとに付け替えて、歯を動かしていきます。
マウスピース矯正は自身で取り外しが可能ですが外したままでいると、言わば”矯正治療が行なわれていない状態”となるので「計画通りに歯が動かない」といったトラブルを招きかねません。
1日24時間のうち20時間以上に渡りマウスピースを装着する必要がありますが、忙しい毎日の中でマウスピースを外したまま付け忘れてしまうこともあるでしょう。
マウスピースを取り外して食事を行なえるので、食事制限は特にありませんが、マウスピース矯正の中で「つけ忘れ」は注意しなければなりません。マウスピースの着脱管理を徹底しましょう。
治療できない症状がある
ワイヤー矯正はさまざまな症例に対応できる矯正装置として認識されておりますが、マウスピース矯正の場合は矯正を行う装置の構造の違いから、歯並び・かみ合わせの状態によっては、マウスピース矯正では治療が難しい可能性もあります。
マウスピース矯正が適応外となってしまう恐れがあるケースは以下の通りです。
大きく歯を動かす必要がある場合
矯正治療において、歯を並べるスペースを確保するために抜歯を行う必要があります。
マウスピース矯正はワイヤー矯正とは異なり、マウスピースを付け替えながら少しずつ歯に圧力をかけていくため、大きく歯を動かすのはあまり得意ではありません。
重度の歯周病である
歯は歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる顎の骨に支えられています。
歯周病は歯槽骨を溶かしてしまう疾病のため、歯を支える歯槽骨が健康でなければ、矯正治療で歯を動かすことは難しくなります。
また、これはマウスピース矯正に限ったことではなく、ワイヤー矯正でもいえることですが、歯を失う最も多い原因である歯周病の予防はもちろんのこと、重症化するのを防ぐためにも早期治療が大切です。
インプラントが入っている
インプラントは人工歯根です。
天然の歯の場合は、歯の根っこの周りに「歯根膜」と呼ばれる薄い膜が存在しますが、歯の脱落とともに歯根膜も喪失するためインプラントには歯根膜が存在しません。
歯根膜は噛んだときに加わる圧力を吸収・緩和させる役割があり、噛むときの「固さ」を察知するセンサーでもありますが、インプラントは歯根膜がない状態で顎の骨である歯槽骨と結合していくため、ダイレクトに圧力がかかってしまいます。
また、矯正治療においては、歯に圧力をかけて歯を動かしていきます。天然歯の場合は、圧力が加わる方向の歯根膜が歯槽骨を吸収することで「すき間」が生まれ、そのすき間分のスペースに歯が移動していくといった仕組みで、矯正治療は行なわれていきます。
インプラントには歯根膜がないため、マウスピース矯正に限らず、矯正治療ではインプラントを動かすことができません。
インプラントの位置をそのままにして、その他の歯だけを動かすことも可能ですが、インプラントの本数やインプラントの位置によっては矯正治療自体が難しいケースもあります。
お一人お一人状況は異なりますので、カウンセリングにて十分にご相談いただく必要があります。
埋伏歯がある
埋まっている歯を引き出して(牽引)萌出させる治療法もあります。
しかし、これはワイヤー矯正のみ適応されるものであり、マウスピース矯正で埋まっている歯を萌出させる矯正治療を行うことはできず、デメリットとの1つとなります。
埋伏歯を放置したままマウスピース矯正を行ってしまうと、埋伏歯が隣りの歯の歯根を吸収してしまう恐れがあります。
また、年齢を重ねるごとに埋伏歯と歯槽骨が強固に癒着して、埋伏歯を牽引できなくなる恐れもあります。
そのため、埋伏歯がある人の場合、放置することなく牽引が可能なワイヤー矯正の検討をおすすめいたします。
骨格に問題がある場合
歯並び・かみ合わせの乱れは、歯が生える位置や方向などによって引き起こされるケースと、骨格に問題があるケースもあります。
歯だけに問題があれば、ワイヤー矯正やマウスピース矯正で矯正治療を行なえますが、骨格が原因であった場合は外科手術を行なわない限り、お悩みである歯並び・かみ合わせの改善が見込めません。
矯正治療を開始する時には、「歯と骨のどちらに原因があるのか」カウンセリングを受けて把握する必要があります。
飲食するたびに歯磨きをする必要がある
矯正治療中に限らず食後に歯磨きを行うことが望まれていますが、特にマウスピース矯正中は食後の歯磨きが欠かせません。
なぜならば、マウスピース矯正は食事を行う際に取り外す必要があるからです。
矯正装置を装着していない状態で飲食を楽しめるので特に食事制限はありませんが、食後に歯磨きを行なった上で、マウスピースをあらたに装着する必要があります。
食後の歯磨きを行わないままマウスピースを装着してしまうとむし歯になりやすいため注意が必要です。
医師によって治療のクオリティが異なる
マウスピース矯正の大半はコンピューターシステムによってマウスピースの設計が行なわれますが、お一人お一人に最適なマウスピースを製作するために歯科医師によってさらに手が加えられます。
そのため同じマウスピース矯正であっても、歯科医師によって仕上がりが異なるといわれています。
マウスピースの手入れが必要
マウスピース矯正は数週間ごとに、マウスピースを付け替えるシステムです。
そのためお口の中の雑菌が繁殖してしまうため、入れ歯と同様に毎日のお手入れが必要になります。
歯ブラシでマウスピースを優しく磨いたり、マウスピース専用の洗浄剤を使用したりして清潔に保てるようにする必要があります。
歯を削る場合がある
マウスピース矯正はワイヤー矯正に比べると大きく歯を動かすことが苦手です。
そのため抜歯ではなく、ディスキングまたは、IPR(Interproximal reduction)と呼ばれる方法で歯を並べるスペースを生み出します。
ディスキングは歯の両側面を数ミリ単位で削り、削った分のスペースを活用して歯を移動させていきます。
健康な歯を僅かではありますが削る必要があるため、デメリットの1つとなります。
マウスピース矯正が向いていない人
マウスピース矯正は、マウスピースを装着するたけで歯を動かせる画期的な矯正装置ではございますが、マウスピース矯正の特性上、マウスピース矯正では改善が見込めない方や不向きである方もいらっしゃいます。
そのため、ここからはマウスピース矯正に向いていない人はどのような人か、詳しくご紹介していきます。
1日20時間装着する自己管理が苦手な人
マウスピース矯正は自分で取り外しができるので、食事のシーンや人前に出るシーンにあわせて取り外しができるメリットがあります。
しかし一方では、取り外したまま改めて装着することを忘れてしまったり、歯磨きできない状況のまま、ずるずると外している時間が長引いてしまったりすると十分な装着時間を得ることができません。
1日20時間の装着が難しいライフスタイルの人、自己管理が難しいと考えた場合はマウスピース矯正が向いていません。
間食をよく食べる人
マウスピース矯正の場合、マウスピースを装着したまま食事を行うことはできません。
そのため、食事を行うたびにマウスピースを取り外し、装着前には歯磨きを行う必要があります。
たとえばお仕事で食べものを口にする機会が多い方だったり、間食を行うことが多い人はマウスピース矯正が不向きだといえるでしょう。
逆に「間食を減らせるいいタイミング」とポジティブに考える方もいらっしゃいますので、マウスピース矯正を検討する場合は、ライフスタイルを振り返り、向き不向きを判断することも大切です。
マウスピース矯正のメリット
これまではマウスピース矯正のデメリットを中心にご紹介してまいりましたが、メリットも一緒に確認していきましょう。
矯正装置が目立たない
従来からある「表側矯正」は、歯の表面にブラケットと呼ばれる矯正装置を装着する必要がありました。
ブラケットは目立ちやすく、「矯正治療中」であることが一目でわかってしまうほどに存在感があります。そのため、見た目が気になって、矯正治療を断念してしまう方も見受けられるほどでした。
一方、マウスピース矯正の魅力といえば、矯正治療を行っていることがわかりにくいことです。
マウスピースは透明なプラスチック製であるので、装着していても目立ちにくいのが特徴です。
見た目にも配慮して矯正治療を行いたいと考える人におすすめな矯正装置です。
重要イベントでマウスピースを外せる
ワイヤー矯正は、歯にブラケット装置を装着します。専用の接着剤で固定するため、自身で取り外すことはできません。
一方で、マウスピース矯正であれば、結婚式や成人式、記念撮影を行う際にも自身で簡単にマウスピースを外すことが可能です。
そのため、矯正治療中の間に重要なイベントを控えている人などにおすすめです。
歯磨きがしやすい
ワイヤー矯正の場合は、専用の接着剤でブラケットと呼ばれる矯正装置を歯の表面に固定するため、歯磨き時にブラケットが妨げになり、歯磨きがしにくくなります。
また、ブラケットと歯のすき間にも汚れが溜まりやすく、むし歯リスクも高まる傾向にありますが、マウスピース矯正の場合は取り外しが可能なため、歯磨きがしやすくなり、お口の中を清潔に保ちやすい特徴があります。
金属アレルギーの不安がない
歯科医療では従来から金属が活用されていますが、金属アレルギーを引き起こす要因になりかねないと、今現在は考えられています。
歯科矯正でもまた、ワイヤー矯正の場合は金属のブラケット装置が活用されており、金属アレルギーの心配があります。
しかし、マウスピース矯正の場合は金属を一切使用していないので、金属アレルギーの心配はありません。
比較的痛みが小さい
ワイヤー矯正は歯の表面にブラケットを装着し、ブラケットにワイヤーを通し連結します。
その上でワイヤーを引っ張り歯を動かしていきます。一方、マウスピース矯正の場合は、少しずつ歯に圧力をかけるように設計されたマウスピースを付け替えていきます。
歯を動かす仕組みが異なり、ワイヤー矯正に比べるとマウスピースのほうが痛みが小さいといわれています。
痛みをできるだけ避けたいと考える人にはマウスピース矯正がおすすめですが、痛みの感じ方には個人差があります。
マウスピース矯正の基礎について知りたい方はこちらも参考にしてください↓
矯正をするならマウスピース矯正がおすすめ!知っておきたい基礎知識
マウスピース矯正を成功させるための注意点
マウスピース矯正のデメリットを把握した上で、注意点も把握してマウスピース矯正を成功させましょう。
自分の症状に適応したマウスピースブランドを選ぶ
SNSの広告などでも目にすることが多いマウスピース矯正ではりますが、複数のマウスピース矯正のメーカーが存在します。
特に価格の安いマウスピース矯正の場合は、前歯部(中切歯、側切歯、犬歯)に限定された治療内容となっているケースも多くあります。
そのため、全体的な矯正治療が必要なのにもかかわらず、前歯部だけのマウスピース矯正で治療してしまうと、理想とは異なった仕上がりとなってしまう恐れもございますので注意が必要です。
まずはカウンセリングを受け、自分の歯並び・かみ合わせの状態を把握する必要があります。
矯正治療は費用がかかるため、できる限り安く済ませたいと考えがちですが、自分の症状に適したマウスピースメーカーを選択ぶことが大切です。
マウスピース矯正の実績が多い歯科医院で治療する
ほとんどのマウスピース矯正は、歯科医院であれば実施できるコンピューターシステムが構築されております。
そのため、歯科矯正の標榜科目を掲げていない一般歯科であっても「マウスピース矯正」が実施されています。
しかし、矯正歯科に比べると実績が少ないケースもあり、そういった場合は仕上がりに満足いかない結果となるリスクも少なからず伴います。
後悔のない矯正治療を受けていただくためにも、マウスピース矯正を検討する場合は、マウスピース矯正の実績が多い歯科医院で治療を受けるようにしましょう。
マウスピースの装着をさぼらない
マウスピース矯正は歯に固定することなく、自身で簡単に取り外せるメリットがあります。
しかし、マウスピース矯正は装着時間が定められており、1日20時間以上マウスピースを装着できない場合はマウスピースが合わなくなり、計画的に歯を動かしていくことが難しくなります。
忙しい現代社会において、マウスピースの装着を常に意識することに負担を感じてしまう人は、マウスピース矯正が失敗に終わってしまう恐れもありますので注意しましょう。
飲食後の口腔ケアを怠らない
マウスピース矯正は、食事を行う際に外す必要があります。
たとえば、外出中のランチでマウスピースを外して食事を行なったとしても、食後の歯磨きができないこともあるでしょう。
歯磨きを行うことなくそのままマウスピースを装着してしまうと、むし歯菌が繁殖してむし歯になる可能性が高まってしまいます。
そのため食後の口腔ケアを怠ることないように食後に歯磨きを行なったり、歯磨きが難しい場合はうがいをするなどして、口腔ケアを怠らないようにしましょう。
まとめ
今回はマウスピース矯正のデメリットについて詳しくご紹介してまいりました。
マウスピース矯正は目立たない矯正装置として注目されていますが、メリットだけではなく、デメリットもあるため、マウスピース矯正の特性をしっかりと理解した上で治療へと進むことが大切です。
特にマウスピース矯正の場合は、歯並び・かみ合わせによっては適用が難しく、自身でマウスピースの着脱管理が必要になってくるため、向き不向きがある矯正装置です。
そのため、マウスピース矯正を検討する場合は、まずはカウンセリングを受けて、マウスピース矯正の適応性を把握していきましょう。
デンタルジュでは、マウスピース矯正をお取り扱う歯科医院をご希望のエリアから選定し、ご案内しております。
なお、「カウンセリングを受けたい!」と思える歯科医院があれば、カウンセリング代行予約までをサポートさせていただきます。
歯科知識を兼ね揃えたコンシェルジュがお一人お一人ご対応させていただきますので、お気軽にご利用ください。
「どこの歯科医院で相談していいのかわからない」「マウスピース矯正を得意としている歯科医院でのカウンセリングを受けたい」と考えている方からのご利用をお待ちしております。