矯正歯科といえば、基本的に保険適用外の治療となり、健康保険が使えません。
そのため全額自己負担になり、治療費が高額なイメージを持たれる方も多いと思います。
ですが、矯正歯科の治療の中には厚生労働省が定めた特定の条件を満たした症例に関して、健康保険が適用になることがあるのです。
そこで、保険診療が可能な矯正歯科についてご紹介します。
どのような場合に適用になるのか、ケースや症例名など、ぜひ参考にしてください。
基本的には「全額自己負担」となる矯正歯科
矯正治療は基本的に、一部の症例を除いて保険診療の適用外です。健康保険をはじめとする、公的な医療保険に関しても請求することができません。
なぜ歯科矯正は保険適用外なのか
一般的な「歯列矯正」は、見た目をきれいに整えるためという側面強い治療と判断されています。
病的な診断がない限り、医科・歯科共に保険適用とはならないのです。
美容整形治療が高額なのをイメージしていただくと分かりやすいのではないでしょうか?
ですから、初回カウンセリング料、検査・診断料、装置料、定期的な調整にかかる費用はすべて自己負担となり、必然的に高額な金額がかかってしまうのです。
その他にも発生する費用がある
また、矯正治療期間に虫歯の治療、抜歯など別の治療がかかる場合があったり、装置撤去後も保定期間に定期的な通院は必要になりますので、トータル金額が高額になってしまいます。
「保険適用される矯正治療」とはどういうことか
中には、公的医療保険が適用される矯正治療があります。
矯正治療が病気を治すことに匹敵するような症例が該当することになりますので、稀な症例にはなりますが、「適用するかもしれない」という方は参考にされてください。
公的医療保険が適用される歯列矯正治療は以下のとおりです。
- 生まれつきお口の中にみられる先天性の異常(指定された59の疾患)
- 顎の大きさや形、位置などが著しく異常な顎変形症と診断された場合
- 前歯の永久歯が3歯以上萌出不全で起きる噛み合わせの異常 (埋伏歯開窓の手術を要する場合に限る)
これらの条件を満たし、歯科医師が診断したものに関しては公的な医療保険を適用して矯正治療を受けることができます。
ただし、適用される疾患名や条件、受けることができる医療機関など細かく限定される部分もありますので、事前に調べておかれる方がよいでしょう。
可能性としては、顎変形症と診断された場合に適応になるというケースが多いかと思いますので、参考にご紹介します。
顎変形症について
顎の骨の成長の不具合によって、形や大きさが原因となり噛み合わせに問題が出ている場合を「顎変形症」といいます。
矯正で歯並びを整えるだけでは難しく、顎離断といった顎の骨を切る外科手術を主なったうえでないと歯列矯正できないような症例であると診断された場合、矯正治療は顎変形症の治療の一環として保険診療が適用になります。
ただし、顎変形症の診断を受けたとしても、その医療機関が「顎口腔機能診断施設」に指定されていない場合医療保険が適用できません。
矯正治療の保険適用となる歯科医院の探し方
もしも矯正治療前に「もしかしたら顎変形症かも」と思っても、指定された医療機関でなければ保険適用になりません。
そこで事前に調べて問合せしてから受診するという方法もあります。
そこで次は厚生労働省が認定する医療機関の探し方をご紹介します。
歯科医師がこの症状のために矯正治療が必要となっていると判断した場合には適応できますので、気になる方はぜひ検索してみてください。
検索方法
保険適応になる矯正治療は、厚生労働大臣が定める施設基準をクリアし、地方厚生局長(支局長)に届け出ている医療機関のみが行えることになっています。
医療機関は地方厚生局のホームページに掲載されていますので、お住まいの地域ごとに検索することが可能です。
<検索方法>
- 地方厚生局ホームページにアクセス
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/ - 地方ごとに8つの支局に分かれていますので、お住まいのエリアをタップします。
- サイト内の検索バナーに「施設基準届出受理医療機関名簿」と入力します。
- 「保険医療機関・保険薬局の施設基準の届出受理状況及び保険外併用療養費医療機関一覧」のサイトをクリックする(ほとんどの場合検索結果の一番上に出てくれる)
- 届出受理医療機関名から、お住まいの都道府県の「歯科」をタップします。
- 一覧から「矯診」もしくは「額診」の項目がある指定医療機関を探します。
厚生労働大臣が定める保険適用になる先天性異常や疾患
- 唇顎口蓋裂[しんがくこうがいれつ]
- ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む)
- 鎖骨・頭蓋骨異形成 [さこつとうがいこついけいせい]
- トリーチャ・コリンズ症候群
- ピエール・ロバン症候群
- ダウン症候群
- ラッセル・シルバー症候群
- ターナー症候群
- ベックウィズ・ウイーデマン症候群
- 顔面半側萎縮症
- 先天性ミオパチー
- 筋ジストロフィー
- 脊髄性筋委縮症
- 顔面半側肥大症
- エリス・ヴァンクレベルド症候群
- 軟骨形成不全症
- 外肺葉異形成症
- 神経線維腫症
- 基底細胞母斑症候群
- ヌーナン症候群
- マルファン症候群
- プラダーウィリー症候群
- 顔面裂(横顔裂、斜顔裂及び正中顔裂を含む)
- 大理石骨病
- 色素失調症
- 口腔・顔面・指趾症候群
- メビウス症候群
- 歌舞伎症候群
- クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群
- ウィリアムズ症候群
- ビンダー症候群
- スティックラー症候群
- 小舌症
- 頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群及び尖頭合指症を含む)
- 骨形成不全症
- フリーマン・シェルドン症候群
- ルビンスタイン・ティビ症候群
- 染色体欠失症候群
- ラーセン症候群
- 濃化異骨症
- CHARGE症
- 6歯以上の先天性部分(性)無歯症
- マーシャル症候群
- 成長ホルモン分泌不全性低身長症
- リング18症候群
- ポリエックス症候群(XXX症候群、XXXX症候群及びXXXXX症候群を含む)
- リンパ管腫
- 全前脳胞症
- クラインフェルター症候群
- 偽性低アルドステロン症
- ソトス症候群
- グリコサミノグリカン代謝障害(ムコ多糖症)
- 線維性骨異形成症
- スタージ・ウェーバー症候群
- ケルビズム
- 偽性副甲状腺機能低下症
- Ekman-Westborg-Julin 症候群
- 常染色体重複症候群
- その他顎・口腔の先天異常(顎・口腔の奇形、変形を伴う先天性疾患であり、当該疾患に起因する咬合異常について、歯科矯正の必要性が認められる場合に、その都度当局に内議の上、 歯科矯正の対象とすることができる。)
※参考:日本矯正歯科学会:矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは | 公益社団法人 日本矯正歯科学会 (jos.gr.jp)
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まとめ
矯正治療で公的な医療保険を使って行えるケースはあまり多くありません。
ですが、ゼロではなく、顎変形症やさまざまな先天性異常でお悩み方の中には、保険適用で治療を受けられる症例もありますので、ぜひ参考に検索されてみてください。
もしも保険適用できない場合でも、医療控除の対象になるケースはたくさんありますので、治療前にぜひかかりつけの医院に確認されてみてください。