矯正治療の中でも、ワイヤーを歯の裏側に取り付けるため、矯正装置が目立ちにくいことが特徴である裏側矯正。
裏側矯正は一般的な表側矯正と比べて、難易度が高い治療法といわれ、対応している医院が少なかったり、治療費が高額であったりします。
一方で見た目の違和感をなくして治療をおこなえるという点が人気の治療法となっています。
裏側矯正(舌側矯正)とは?
裏側矯正(または舌側矯正)は、歯の矯正治療の一種です。この治療では、矯正装置が歯の裏側(舌側)に取り付けられるため、他人からはほとんど見えない位置での矯正治療となります。
①裏側矯正が人気の理由
裏側矯正は、矯正装置が歯の裏側に取り付けられるため、見た目の違いが他人からはほとんど分かりません。ビジネスや日常生活での見た目の影響を最小限に抑えることができ、このことが裏側矯正が人気である理由の一つといえます。
また、裏側矯正では、一般的な表側矯正と同様に効果的な歯の矯正治療をおこなうことができます。
②裏側矯正と表側矯正の違いとは?
裏側矯正と表側矯正の主な違いは、矯正装置の位置によるものとなります。
矯正装置の位置
裏側矯正では歯の裏側に取り付けられ、表側矯正では歯の表側に取り付けられます。
目立ちやすさ
裏側矯正では他人から見てもほとんど気づかれない一方で、表側矯正では外から見えるため、矯正装置は目立ってしまいます。
慣れるまでの時間
裏側矯正では初めは舌に違和感を感じることがありますが、表側矯正は裏側矯正に比べて、慣れるまでの時間が短いです。
このようにどちらの方法にもメリットとデメリットがあることが分かります。
裏側矯正のメリット・デメリットは?
ここでは特に裏側矯正についてのメリット・デメリットを紹介します。メリットについては3点、デメリットについては5点紹介するので、ぜひ治療法選びの参考にしてください。
裏側矯正の3つのメリット
①人と話すときに器具が見えない
前述したとおり裏側矯正の最大のメリットの一つは、矯正装置が外からほとんど見えないことです。これにより、仕事や日常生活などでコミュニケーションをとる必要性があっても気にせずに治療をおこなうことができます。
②歯の表面が傷つきにくい
矯正器具が歯の裏側に装着されるので、外力による歯の表面(エナメル質)の傷や損傷のリスクが減少します。歯の裏側は表側よりエナメル質が厚いということがその理由です。
③矯正中に歯周病や虫歯などになりにくい
裏側矯正では歯の表面が露出しており、そのため表側は歯磨きがしやすくなっています。また、歯の裏側は歯磨きが難しいものの、もともと唾液が循環しており、自然と汚れや雑菌が落とされるので、歯周病や虫歯のリスクは相対的に低いといえます。
裏側矯正の5つのデメリット
①装置がなじみにくい
前述のとおり裏側矯正は、装置が舌に接触するため、最初は話すときや食事の際などに若干の違和感を感じることがあります。この違和感は時間とともに無くなっていきますが、最初は舌が傷ついたり、口内炎ができたりする可能性があります。
②矯正装置が壊れやすい
歯の裏側は面積が少ないため、接着面が少ないので矯正装置が外れやすくなっています。また、矯正装置間の距離が短く、矯正装置に強い力がかかってしまうということも原因の一つです。さらに、上の前歯の裏側の矯正装置が下の前歯に接触してしまうことで外れてしまうこともあります。
③対応している歯医者が少ない
裏側矯正を提供している歯科医院はそれほど多くないため、適切なクリニックを見つけるのが難しいです。
その理由として、裏側矯正は矯正装置の作成に高い技術力を必要とするということが挙げられます。歯の裏側は表側よりも凹凸が激しく、器具の作成には豊富な経験と技術力が要されます。そのため、対応できる医院も限られています。
④発音がしにくい
初めのうちは、裏側矯正は装置により発音が難しくなることがあります。特に舌を歯の裏側にあてて発音することが難しくなります。そのため、さ行、た行、ら行の言葉に影響が出やすいです。
ただし、数週間ほどで慣れていくことが多いようです。
⑤矯正費用が高額
裏側矯正の費用は一般的に表側矯正よりも高額です。
一般的な表側治療は地域や医師の実績などで値段が異なるものの、治療費は600,000~1,000,000円といわれています。一方、裏側矯正は、800,000~1,500,000円となっています。また、治療期間も裏側矯正の方が長くなることが多いです。
そのため、事前に料金を確認しておくことをお勧めします。
裏側矯正は、目立たずに矯正治療をおこないたい人には特におすすめの治療法ですが、前述のとおり、対応している医院が少なく、それを見つけるだけでも一苦労です。また、いざ見つけても高額な治療費がかかるだけに慎重に決めたいですよね。
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裏側矯正に手が出しにくいときにはハーフリンガル矯正も
裏側矯正は、確かに魅力的な選択肢ですが、前述の費用が理由で治療をためらってしまうケースが多いです。そんなときに別の選択肢として選べるのが、ハーフリンガル矯正です。ここではハーフリンガル矯正について紹介したいと思います。
ハーフリンガル矯正とは?
ハーフリンガル矯正は、上の歯には裏側に矯正装置をとりつけ、下の歯には表側に矯正装置を取り付ける、表側矯正と裏側矯正の間をとった治療方法です。
話したときや笑ったときなどに比較的外から見えやすい上の歯のみを裏側矯正にすることで、費用を抑えつつ、裏側矯正のメリットを活かすことができます。
ハーフリンガル矯正のメリット
コスト削減
上の歯にだけ矯正装置を装着するため、高額な裏側矯正の矯正費用を抑えることができます。加えて、歯の裏側に矯正器具を装着する部位が減るため、舌や内側の頬の不快感を比較的最小限に抑えることができます。また、幅広い症例に対応できる方法となっています。
ハーフリンガル矯正のデメリット
下の歯の矯正装置は見えてしまう可能性も
下の歯は比較的外部からは見えにくいといわれていますが、装置は歯の表側に付けられるので目立ってしまうこともあります。見た目にこだわりたいという人はその点も考慮するとよいでしょう。
【ハーフリンガル矯正について詳しく知りたい方へ】
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裏側矯正はどんな症例に適している?
それではどんな症例にこの裏側矯正が適しているのでしょうか? また、裏側矯正ができない症例はあるのでしょうか? ここでは、これらの疑問に答えていきたいと思います。
できない症例はあるの?
基本的に表側矯正治療で治せる症例は裏側矯正治療を適用することができます。
ただし、骨格が適さない場合や顎変形症の場合などは治療することはできません。
特に顎変形症の場合は矯正治療自体をおこなうことができないので、まずは外科手術で改善してもらう必要があります。
どんな症例に適している?
前述のとおり表側治療で治せる症例には適しています。裏側治療の最大のメリットは外から見えにくいという点ですので、そのような治療を望む人が選ぶ選択肢となっています。
矯正治療の流れ
以上の内容では裏側治療の特徴を紹介してきました。ここでは実際の裏側矯正治療の流れについて詳しく説明します。裏側矯正は、一般的な矯正治療と同様の治療方法をたどるので、以下の流れは矯正治療全般で共通しているものとなります。
① 初診
まず最初に、矯正歯科医による口腔内の診察が行われます。この段階で、歯の状態や咬み合わせの問題、裏側矯正の適用可能性などについて詳細に確認していきます。歯医者さんの見解がこの場で伝えられ、希望や条件などを伝える場ともなります。治療に関する合意形成に向けてすれ違いがないようにしましょう。
② 診断と治療計画
初診に続いて、口腔内のX線撮影や歯の型を取るなどの診断処置がおこなわれます。この場で機械を用いて厳密な検査がおこなわれます。
ここでのデータをもとに治療計画が立てられることになります。さらに、治療方法や矯正料金などについての説明もおこなわれることになります。
③ 装置の製作
治療計画に基づいて、専用の矯正装置が製作されます。これには数週間の時間がかかることがあります。また、前準備として矯正装置を装着する1~2週間前にゴムリングを装着したり歯型を取ったりすることがあります。
④ 装置の装着
製作された裏側矯正装置が、歯の裏側に精密に装着されます。矯正装置を装着すると歯磨きが難しくなるので歯磨き指導がおこなわれる医院もあります。
⑤ 矯正治療期間中のフォローアップ
装置の装着後は、定期的に矯正歯科医のもとでチェックを受けます。この時に、装置の調整が行われることがあります。また、矯正の進行状況や口腔内の健康状態などが確認されます。特に裏側矯正は前述のとおり器具が外れやすくなっているのでこまめにつけなおす必要があることもあります。
⑥ 装置の除去と保定装置の装着
矯正治療が完了すると、装置は専門的に除去されます。その後、リテーナー(保定装置)の装着をおこないます。矯正後の歯茎は矯正前の位置に戻ろうとする働きがあるので、リテーナーを用いて保定をする必要があります。また、定期的なフォローアップがおこなわれ、長期的な矯正効果が維持されます。
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裏側矯正治療の流れは、基本的に他の矯正治療と同様ですが、裏側に装置が装着される点が異なります。初診から装置の除去、アフターケアに至るまで、専門的なケアと定期的なチェックが不可欠となります。
裏側矯正についてよくある質問
裏側矯正に対しては多くの疑問や不安も存在します。ここでは、裏側矯正に関するよくある質問に対する回答をしていきたいと思います。
①裏側矯正は痛む?
痛みの程度
裏側矯正も他の矯正治療と同様、初めのうちは歯や口内に違和感や痛みを感じることがあります。これは、歯が動き始めるためと、新しい装置に口が慣れていないためです。
痛みの対処法
痛みは一時的なものです。違和感や痛みを軽減するためには、痛みを和らげる薬を処方してもらったり、冷たいもので炎症を抑えることが効果的です。ただし、痛みが持続する場合は、速やかに矯正歯科医に相談してください。
②表側矯正の方が良い場合は?
表側矯正は、裏側矯正よりも広く使用されており、矯正歯科医も慣れているという点は押さえておいてもよいかもしれません。
表側矯正のメリット
裏側矯正は見た目の面での利点がありますが、費用が高くなる場合もあります。費用を抑えたい場合や重度の歯の問題や咬み合わせの問題がある場合などで表側矯正が推奨されることがあります。
まとめ
裏側矯正は、見た目に気を遣いつつ矯正治療を進めたい場合にはお勧めの選択肢です。ただし裏側矯正にはメリットとデメリットがあり、事前に理解しておくことが必要です。
一般的に裏側矯正は、他の矯正治療法よりも費用が高くなることがあります。
自身のニーズや予算などに基づいて、適切な矯正治療方法を選択してください。もしも判断に困る場合があれば矯正歯科医との十分な相談をしたうえで決定するのが良いでしょう。