近年では大人になってから歯科矯正を始める人が増えてきました。
その背景には、白い矯正器具や裏側矯正、マウスピース矯正など目立たない矯正治療が主流になってきたことが挙げられます。
そんな矯正治療では矯正器具を使って歯を動かす治療がフォーカスされがちですが、実はそれだけではないということを知っていますか?
矯正治療には歯を矯正器具で動かす「動的治療」と、キレイに並んだ歯を固定する「静的治療」の2つに分かれています。
今回は、静的治療の保定期間やリテーナーについて詳しくお話ししていきます。
動的治療の「矯正治療」と静的治療の「保定期間」
冒頭でもお話したように、矯正治療には歯を矯正器具で動かす「動的治療」と、キレイに並んだ歯を固定する「静的治療」の2つの流れがあります。
それぞれ詳しくお話ししていきますね!
矯正治療:動的治療
まず、歯科矯正では歯に力をかけて動かしキレイに並べていく「矯正治療」を行います。
これはブラケットやワイヤー、またはマウスピースなどの矯正器具を使って歯をダイナミックに動かしていくため「動的治療」と呼ばれています。
動的治療の期間には、矯正器具だけでなく「顎間ゴム」や歯と歯の間を削る「ディスキング」など様々な処置を行いながら歯を並べていきます。
この期間は治療による痛みや口内炎などトラブルも起こりやすく、大変に感じるかもしれませんが歯をキレイに並べるためのもっとも重要な期間であることを理解しましょう。
保定期間:静的治療
動的治療である矯正治療が終了すると、その歯並びを固定する「保定期間」に入っていきます。
保定期間では、リテーナーと呼ばれる「保定装置」を長時間装着して歯の後戻りを防いでいきますが、特に歯を動かしたりするような積極的な治療は行わないため「静的治療」と呼ばれています。
矯正治療で歯を並べたあとはキレイになった歯並びを見て満足してしまいがちですが、歯を支えている骨は不安定な状態で保定期間を取らずに放置してしまうと歯が元の位置に戻ろうとする後戻りを起こしてしまうのです。
保定期間は地味な治療ですが、将来の歯並びを決めるため動的治療と同じぐらい重要であるということを理解しておきましょう。
保定期間はどれぐらい必要?
歯を動かしていく動的治療の矯正治療では最低でも2年ほどかかりますが、保定期間は最低でも動的治療にかかった期間以上取らなければいけません。
しかし、保定期間には最終的なゴールは特にないためリテーナーをしている期間が長ければ長いほど矯正治療を後の状態を保つことができます。
そのため、矯正治療を終了して2年以上の保定期間をとった後も寝るときには必ずリテーナーを使っているという方も多いです。
保定装置(リテーナー)の種類
保定装置(リテーナー)には様々種類があり、その人の歯並びの状態や希望で歯科医師と一緒に決めていきます。
リテーナーには大きく分けて2つのタイプがあり、その中でも様々な種類があります。ここでは、主流のリテーナーをいくつか紹介していきます。
固定式リテーナー(フィックスタイプ)
固定式のリテーナーは、歯に直接保定装置を固定しご自身では取り外しができないタイプになります。基本的にはワイヤーを接着剤で歯つけ、歯を固定していく方法で歯科医師が装着していきます。
別名「フィックスタイプ」とも呼ばれ、歯が後戻りしやすい前歯の裏側に固定されることが多いです。
歯の裏側に細いワイヤーを装着するだけなので、目立つことなく違和感もありません。取り外すことがないので自分で管理する必要がなく楽なのが大きな特徴です。
しかし、ワイヤーの周りには汚れが溜まりにくいのでご自身での徹底したホームケアと歯科医院にてメンテナンスを行う必要があります。
<特徴>
・取り外し出来ない固定タイプ
・歯の裏側に細いワイヤーを装着
・目立たない
・徹底したケアが必要
取り外し式リテーナー(可徹式)
取り外し式リテーナーは、患者様ご自身で取り外しが可能なタイプのリテーナーになります。
マウスピースタイプのものもあれば、ワイヤーとマウスピースを組み合わせたようなタイプのものがあります。以下の3つが最もよく使われるリテーナーです。
ベッグタイプ:ワイヤーで歯を抑えプラスチックで歯茎を覆うタイプ ホーレータイプ:後戻りがしやすい傾向がある前歯のみを抑えるタイプ トゥースポジショナー:歯列全体を透明なマウスピースで覆うタイプ |
取り外しタイプリテーナーの特徴としては、食事や歯磨きの際には取り外しが可能なためケアがしやすく虫歯や歯周病のリスクが少ないことです。
大事なイベント時にも外すことができ、寝る時間だけ装着…と自分で装着の調整ができるのも嬉しいところです。
しかし、ご自身での管理が必要なため長時間装着を忘れてしまうと後戻りを起こすこともあります。ご自身の判断で保定期間を辞めないように注意が必要です。
<特徴>
・取り外しが可能
・歯磨きや食事がしやすい
・見た目に気にならない
・装着しているときは噛み合わせや発音に違和感を感じやすい
・装着を忘れると後戻りする
保定装置を装着する時間
保定装置をつけるタイミングですが、ご自身が矯正治療を終えてどのぐらい経っているのかによっても装着時間が変わってきます。
歯を並べる動的治療が終わったばかりの頃は歯が最も後戻りを起こしやすい時期ですので、最低でも一日に20時間以上は装着していないといけません。
食事や歯磨きの時間以外は保定装置を付けているというような状態です。
1年半から2年ほど経ったあとは夜寝る時だけリテーナーをつけるなど時間を短縮していきます。
歯の戻り方には個人差があるので、歯科医院で定期的に確認してもらいリテーナーの装着時間については歯科医師に相談しましょう。
歯ぎしりや食いしばりがある方は、夜にマウスピース形のリテーナーを付けて寝る習慣をつけると後戻りを防止するだけでなく歯へのダメージを減らすことができます。
まとめ
今回は、矯正治療の静的治療である「保定期間」と「リテーナー」についてお話ししました。
保定期間は1日に20時間以上と長い間装着しなくてはいけないため、煩わしいと感じるかもしれませんがキレイな歯並びを保つためにとても重要な工程です。
慣れてしまうと生活の一部になってきますのでリテーナーをつける習慣を付けていきましょう。
ご自身が使うリテーナーの種類については歯科医院で相談になります。保定期間をしっかりとって美しい歯並びにしましょうね!